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小学校のとき、同級にS子という子がいた。けっこう嫌われ、いじめられていた。虚言癖があった。いじめられて虚言を吐くようになったのか、あるいは虚言のせいでいじめられていたのか、思い出せないが、ある時期の嘘にこういうものがあった。
「自分は実はタレントであり、この春から主演ドラマも決まっている。ソフトボール部のエース役で、役名は『一之瀬あきら』、コーチは伊藤蘭、監督は嶋大輔、そしてタイトルは『明日に向かって投げろ』っていうの」
ところでS子はケントデリカット級のメガネをかけ、わりと十勝花子に似ていた。
私は共演者のラインナップに変に現実味を感じたので「へえ」と信じかけたが、周囲ははなっから疑っていたようだった。今思えば「明日に向かって投げろ」、ってなあ。案の定、放送は「延期」だそうで、そのドラマをブラウン管で目にすることはなかった。
なぜ今その話を思い出したかというと、今TBS系列でやっている「輪舞曲」というドラマで、木村佳乃の役名が「一之瀬あきら」なのだった。少なくともS子が夢に描いた役名は現実に存在することになったのだ。よかったな。S子。
***余談だが、当時の「いじめられてる」という定義はあいまいなもので、私たちはよくS子の家に行ってもんじゃ焼き(まずかったが)を食べたりして遊んだ。今の、逃げ場を作らないようないじめ方とは違う、牧歌的な世界だ。
投稿者 otzko : 2006年01月23日 01:16